コースクリエーターのための極上健康法4

美容や健康にいい栄養素というと、まず”ビタミン”を思い浮かべがちですが、それは必ずしも正確な理解ではありません。脳や体の機能を向上させるためには、良質な油やタンパク質が不可欠というお話をしましたが、ビタミンはその吸収を助ける栄養素です。つまり、タンパク質とビタミンを十分に摂ることで代謝が促進されて脳や体の機能が高まるというのが正解です。

前回までは、最善の体を作るための”材料”について解説しましたが、今回のセクションではそれらを有効に吸収し働かせるとなるビタミンと炭水化物の選び方について解説します。

ポンコツシトロエンの旅、箱根

1.脳と体の働きを変えるビタミン

油やタンパク質を体に取り入れても、それがそのまま体の組織や脳内の調整物質となるわけではなく、体が必要としている物質に変化させる工程が必要です。そのプロセスについて見ていきましょう。

1-1.ビタミンは食材を体の細胞に変える魔法の杖

体にとり入れられた油やタンパク質を脳の土台や脳内ホルモン、脳細胞の調整物質に変換する役割は、補酵素という物質が担っています。、代表的な補酵素はビタミンです。下の図では補酵素、すなわちビタミンを魔法の杖のイラストで表現しています。

もしビタミンが不足すると、食べた栄養が必要な物質に変換できず大変なことになってしまいます。例えばタンパク質はセロトニンやドーパミン、GABAなど重要な脳内物質になりますが、これらの脳内物質はビタミンがなければつくることができません。

1-2.ビタミンの種類と効用

ビタミンには、粘膜や皮膚の健康維持に関わるものやエネルギー代謝に関わるものなど、種類によってさまざまな働きがあります。下の図をご覧ください。

例えばビタミンAは粘膜や皮膚、免疫などの健康維持に必要なものです。ビタミンAが不足すると、風邪をひきやすくなったり、肌の調子が悪くなったりします。

ビタミンB1は糖の代謝、つまり食べたものをエネルギーに変えていくために必要なビタミンです。次の章でも解説しますが、脳にとって糖は唯一のエネルギー源なので、ビタミンB1が不足すると脳の働きが悪くなってしまいます。

ビタミン B2は脂肪をエネルギーに変える役割があります。良質な油を摂ってもビタミンB2が不足するとエネルギーに変換されず、肥満になりがちです。

1-3.ビタミン不足を避ける方法

前の章で紹介した11種類のビタミンは、どれも欠かすことができないものです。不足を防ぐには、できるだけ多くの種類の野菜などを食べてまんべんなくビタミンを摂るのが理想ですが、忙しい方には難しいかもしれません。

工夫例としては、紫キャベツと緑のキャベツを刻んで酢漬けにして、ザワークラウトみたいな感じにすれば2、3日は日持ちします。私も忙しい時はそうやって野菜を食べるようにしています。そういった工夫に加えて、マルチビタミンのサプリメントでビタミンを補給するのがお勧めです。

マルチビタミンのサプリメントは、ビタミンA からEまですべての種類が配合されているものを選ぶといいでしょう。月数千円のコストにはなりますが、ビタミン不足によりパフォーマンスを発揮できないことによる損失と比べてみてください。サプリによるビタミン補給を習慣化してパフォーマンスが向上すれば、賢明な選択をしたと実感していただけると思います。

2.脳と体の働きを変える炭水化物

脳と体の機能を向上させる栄養素の二つめは炭水化物です。炭水化物の摂り過ぎは肥満の原因になるというイメージを持たれがちですが、炭水化物は脳にとって唯一のエネルギー源なので、しっかり摂取したい栄養素なのです。ここでは、脳へ十分なエネルギー供給をしながら肥満を避ける炭水化物の摂り方を見ていきましょう。

2-1.炭水化物の構造

炭水化物の特徴を理解するために、まずその構造を押さえておきましょう。炭水化物は糖と食物繊維からできています。このうち、脳のエネルギー源となるのは糖で、血液により脳へ運ばれます。炭水化物をやみくもに減らすと脳のエネルギー源の糖が不足して、思考力や集中力が低下する原因となってしまいます。

なお糖は筋肉のエネルギーとしても使われますが、筋肉は糖のほかに脂肪もエネルギー源にできるので、炭水化物が減っても筋肉のエネルギー不足はあまり心配しなくても大丈夫です。

2-2.炭水化物で肥満になるメカニズム

炭水化物に含まれる糖は脳にとって貴重なエネルギー源ですが、肥満の原因になるのも事実です。そこで、炭水化物で肥満になるパターンを確認して対策を考えましょう。

腸で吸収された糖は血液により脳に運ばれますが、このとき糖が急激に血液に取り込まれると血糖値が急上昇して、インスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血液中の糖を押し出して血糖値を安定させようとする働きがあり、押し出された糖は体脂肪として蓄積されてしまいます。

つまり糖の吸収が早いと脳にエネルギーが供給されず、脳はエネルギーを欲して空腹感を感じる信号を出し、すぐに食べたくなるという悪循環に陥ってしまいます。これが炭水化物により肥満になりやすくなるメカニズムです。

2-3.脳へ安定してエネルギーを供給する方法

このような害を避け糖を脳へ供給するには、糖の吸収のスピードを抑えることがポイントになります。食事で摂った糖を薪を燃やすように少しずつ吸収して脳にエネルギーを供給し続けることができれば、長時間パフォーマンスを維持することもできて理想的です。その鍵となるのは食物繊維です。

食物繊維には糖の吸収にブレーキをかけて血糖値を安定させる働きがあります。つまり食物繊維を多く含む炭水化物を選べば、血糖値の急上昇を抑えて脳へ安定してエネルギーを供給することができるわけです。

2-4.食物繊維を多く含む食材

現代では食物繊維が少ない炭水化物が多く売られています。白米や白いパン、お菓子などがその代表例です。一方、食物繊維が多いのはどんな食品でしょうか。下の図をご覧ください。

白米よりも玄米や麦、5分搗き、白パンよりも全粒粉やライ麦のパン、うどんよりもそば、じゃがいもよりもさつまいものほうが食物繊維を多く含んでいます。またお菓子が食べたくなったら食物繊維が多いナッツ類を口にするのもお勧めです。

糖の吸収が早いと脳はご褒美がもらえたと認識するため、知らず知らずのうちに食物繊維が少ない食品を好む食習慣が身についてしまうことも、肥満が増える一因です。なので、意識して食物繊維が多い炭水化物を選ぶようにしましょう。

そうはいっても、いきなり全部を食物繊維の多い食材に切り替えようとするのは負担に感じるかもしれません。ストレスを感じない範囲で、脳のパフォーマンスが向上することを実感しながら少しずつ食生活をシフトしてみてください。

3.脳と体の働きを変える食物繊維

次に脳と体の機能を向上させるポイントとなる体の器官に目を向けてみましょう。ここでは栄養素を体に取り入れる窓口となる腸を取り上げます。せっかく質の良い食事をしても腸の調子が悪ければ栄養が吸収されません。さらに、腸の調子と脳の調子はお互いに影響し合っていることも分かっています。腸を良好な状態に保つことは、脳と体の機能向上にとってたいへん重要な意味があるのです。

3-1.腸の役割

私たちが口にした食べ物は吸収しやすいように分解されて、腸で栄養素を吸収され、栄養素は血液によって全身に運ばれていきます。また腸は取り入れてはいけない異物をシャットアウトする防御壁のような役割もあります。

3-2.意外に深い腸と脳の関係

腸は栄養素を吸収する窓口というだけではなく、腸と脳は自律神経系や液性因子という物質を介してお互いの調子に影響し合っていることが分かっています。これを脳腸相関※といいます。

ストレスを感じた時にお腹の調子が悪くなったことはありませんか?脳がストレスを感じると腸を刺激して、お腹が痛くなったり便意を催したりすることは、腸脳相関により説明できます。またその逆に腸の調子が悪いと、脳にも悪影響を及ぼして気分が落ち込んだりすることも往々にして起きています。

脳や体のトラブルは、実は腸に原因があることも珍しくありません。腸の調子は脳や体の機能にも直結するので、腸の健康には十分に注意を払う必要があります。

腸内細菌学会HP「脳腸相関」

3-3.腸の調子を整える方法

腸の調子を整えるためには、腸内の善玉菌を増やすのが効果的です。腸内には善玉菌や悪玉菌、日和見菌といった常在菌が存在しますが、善玉菌はその名前のとおり腸の消化吸収を助けたり、ビタミンを合成したり、体に良い働きをしてくれます。

では善玉菌を増やすにはどうすればいいのでしょうか。善玉菌は炭水化物に含まれる食物繊維をエサとしています。前章でも登場した食物繊維は、腸内で糖の吸収を穏やかにしてくれるだけでなく、善玉菌の栄養になってくれるありがたい成分です。ぜひ食物繊維の多い炭水化物を摂るようにしてください。

なお悪玉菌は腸に届いた栄養素を横取りした上に、発がん性物質や毒素を生成するというとんでもない作用があります。善玉菌と悪玉菌は腸内で勢力争いをしているので、善玉菌が優位な腸内環境を保つことが重要です。繰り返しになりますが、ポイントは食物繊維です。

3-4.善玉菌の効用

善玉菌のメリットをさらに理解していただくために、善玉菌の一つであるバクテロイデスという腸内菌についてご紹介しておきます。バクテロイデスは腸内で短鎖脂肪酸という物質を作り出しますが、短鎖脂肪酸には下の図のような働きがあることで注目を集めています。

食欲や脂肪の蓄積を抑えたり、インスリンの働きを活性化することで、肥満や糖尿病になりにくくなります。また腸内を弱酸性にすることで悪玉菌の増殖を抑え、炎症を抑えることでガンを防ぐ効果もあります。

今回のセクションでは脳と体の働きを変える栄養素として、ビタミンと炭水化物を取り上げました。一度に全部を実践することよりも少しずつ習慣化して、食事を楽しみながらコースクリエーターとしてのパフォーマンスを向上させてください。